日本薬理学雑誌
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抗潰瘍薬Cetraxateの薬物速度論的および薬理学的考察
田中 尚内藤 俊一
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1985 年 85 巻 5 号 p. 357-366

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抄録

cetraxate hydrochlorideについて,家兎を用いて体内動態を調べ,薬物速度論的考察および代謝物の抗潰瘍作用について検討した.本報において確立したHPLC法によりcetraxateおよびP-hydroxyphenylpropionic acid(PHPA)を測定した結果,cetraxateは,消化管内および血液中において,容易にPHPAに代謝され,さらに新代謝物P-hydroxybenzoic acid(PHBA)の出現することも確認された.cetraxateを家兎に経口投与した時の臓器内分布を調べた結果,胃壁のみに未変化体cetraxateは分布した.また脳を除く検索した全ての臓器に代謝物PHPAの分布が認められた.cetraxate hydrochlorideの抗潰瘍作用が,cetraxate,PHPAあるいは,体内で必然的に生じるtranexamic acidによるものであるかを,ラットを用いた幽門結紮アスピリン潰瘍および水浸拘束ストレス潰瘍において検討した結果,tranexamic acidもcetraxate hydrochlorideと同等の抗潰瘍作用が認められた.cetraxateの体内動態の結果と抗潰瘍作用の結果を併せて考えると,cetraxateの抗潰瘍作用の一部には,代謝物であるtranexamic acidが関与しているのではないかと考えられた.

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