胆石症10例, 胃癌切除手術5例の術中にCefmetazole (CMZ) 2gを静注し, 血中濃度の推移をHigh performance liquid chromatography (HPLC) 法及び
Micrococcus luteus ATCC9341を検定菌とするBioassay法にて検索し, 術後2~3日目に検索した血中濃度推移と比較検討した。症例は男5例, 女10例, 年齢38~73歳, 体重41~64kgであった。全例において, 術前の肝機能, 腎機能等に異常を認めなかった。手術時間は胆石症で平均約1時間, 胃癌で平均約3時間であつた。出血量は胆石症で平均120 ml, 胃癌で620 mlを認め, 補液量は胆石症610 ml, 胃癌1,200 mlであった。胃癌患者の一部では輸血を併用した。
手術中と術後のCMZ血中濃度推移を比較すると, 術中の血中濃度はピーク値も高く, 減少も術後に比べてゆるやかであつた。HPLC法による検索では, 胆石症においては術中でT 1/2は2.11時間, 術後は1.42時間であり, 胃癌では術中1.31時間, 術後2.21時間を示した。濃度曲線下面積 (AUC) は胆石症術中469.39μg・hr/ml, 術後294.44μg・hr/ml, 胃癌術中339.83μg・hr/ml, 術後329.75μg・hr/mlであった。臨床的には, 全例において術後感染症の発現を認めなかった。
消化管手術等の準無菌手術において, CMZを術中から投与することは, 術後感染症の予防に有用であると考えられる。術中投与時の血中濃度推移は術後におけるよりも高値を示すが, 大差はなく, 副作用等の危険も少ないものと考える。
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