本稿の目的は,日本における経済地理学の発展と
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の活動を英文で論述することで,研究の国際交流に貢献することにある.矢田(2003)によれば,戦後日本における経済地理学の発展は,近代科学への変貌を推し進め,
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の設立に至った「揺藍期」(終戦〜1950年代前半),実証分析としての「経済地誌論」と理論分析としての立地論研究が興隆した「離陸期」(50年代後半〜70年代前半),「経済地誌論」と立地論の統合を志向し,その一部が「地域構造論」として結実した「発展期」(70年代後半〜90年代前半),アプローチが多様化し,海外研究の「輸入」が進んだ「転換期」(90年代後半〜)の4つの時期に区分できる.
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の研究集会活動は,全国大会,地域大会,支部例会の3つに分けられる.全国大会と地域大会では,日本における地域経済の諸問題や現実の動向を反映した統一テーマを設定して議論を行う.全国5つの支部に分かれて開催される支部例会は,地域密着という学問的特徴があらわれる.2001〜06年の『経済地理学年報』に掲載された論文には,経済地理学における近年の研究動向が反映されている.学問内の分野別にみると,理論・方法論や地域政策に関する研究は,『年報』をはじめとする査読学術誌での掲載が減少し,各大学の紀要など非査読誌での掲載が多くなっている.製造業とりわけ産業集積に関する研究は近年でも盛んであるが,サービスや情報・知識など非製造業関係の論文もまた増加している.また若手研究者を中心に,就業や福祉,行政のあり方といった生活・社会に関わるテーマの研究が増加している点も近年の特徴である.最後に,
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における『年報』以外の学術書の刊行および若手研究者の研究奨励活動について紹介した.
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