自動車、家電、医薬品、化粧品、建材など、化学の製品は我々の身の回りでいたるところに利用されている。化学産業は重要な素材産業の一つであるが一般的には地味で目立たない感がある。一方で派手な産業といえば、ITなど新産業やアメリカ型の大型投資・大型リスク型の経営であり、持て囃される。しかしパフォーマンスやアピールで目立つことも重要かもしれないが、注意深く見ると「良い経営」とはいえないものも多い。「地味な素材、化学はダメ」なのか。欧米キャッチアップ時代に培った日本発の経営改善策には、今なお活用できる素晴らしい知識・技術・ノウハウが凝縮されている一方で、急成長のしわ寄せによる「膿」も見え隠れする。しかし逆を言えばこの「膿」を除けば既存産業の再活性化も十分可能である。今、化学企業の生産現場において、地道な日々の研究が時代とマッチングして数々のイノベーションが起きている。これまで化学産業が蓄積してきた知 (K)、創業の志 (M)、道徳律 (M) の三位一体で社会貢献を目指すと同時に経営改善によるコスト削減を追及する「バランス経営」が既存産業に、さらには日本経済に求められている。
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