岐阜県白川郷は、その独自の建築、生活様式が評価され1995年に世界文化遺産に登録された。それに伴い、観光客が殺到したことで交通渋滞などの問題が生じ、地域の持続性に問題が生じた。それに対して、住民全体で構成される守る会や行政が中心となり様々な取り組みを行った結果、住民生活のバランスと観光業が地域の持続性に役立つことが評価され、GSTCにより2020年世界の持続可能な観光地100選に選出された。本稿では観光公害への対策である各取り組み群を「プログラム」と捉え、ステークホルダーと複合的な課題を持つ地域が、持続的と評価されるに至ったマネジメントの重要要件についてP2Mフレームワークを適用して分析した。その成功要因として、白川郷では多くのステークホルダーがミッションを共有し、相互に連携しながら役割を果たすシステムとして、「集合的ミッション」が形成されていたことを示した。また、その中でも町役場(行政)と住民組織がバックボーンとして、並列型のミッションや逐次型のミッションがすべてのステークホルダーに明確に共有できる仕組みが同地区のプログラムミッション達成に相乗効果を発揮していると評価できるに至った。
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