本稿では1) 昭和初期の
埼玉県
南部地域の野菜産地と産地市場の地域的特性を概括し, 2)産地市場簇生の社会・経済的背景を市場開設・継続理由を中心に時系列的に検討した. 3) さらに市場合同を主要契機とする市場間紛争と,これに対する
埼玉県
当局の市場規則ならびに準則の具体的運用過程の考察をとおして,市場圏規制の解明を試みた.
その結果,産地市場の簇生については,近郊農業地域の外延的拡大による東京市場からの遠距離化,野菜生産の発展に伴う生産労働と出荷労働の分離,価格暴落を補完するための生産集中,旅荷の圧力に対抗するための輸送費の軽減等が産地市場の設立機運を醸成し,さらに中央卸売市場法の制定と連動する流通体系の近代化に対応するため,生産者が規格と荷姿の統一を含む出荷統制の拠りどころを,産地市場とくに出荷組合市場に求あたことも要因となっていた.
なお,「1市町村1市場」を原則とする市場圏規制については,市場規則・市場業務規定準則ともに一切触れていないが,条項の運用面から規制の基準を特定すると,都市規模・市場の性格・市場競合の有無・市場規模などがあげられる.
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