気道狭窄の原因には鼻・咽頭疾患, 喉頭疾患, 気管・気管支疾患, 異物症などが挙げられる. 成人の声門下狭窄の原因疾患は急性声門下腔炎, 喉頭ジフテリア, 喉頭浮腫, 喉頭腫瘍, 喉頭外傷である. 頸部気管狭窄の原因疾患は気管形成不全, 気管軟化症, 結核罹患後の瘢痕, 気管外傷, 気管内肉芽, 気管腫瘍, 外側からの圧迫などである.
炎症性疾患はその程度により気管切開などの気道確保を行い, 抗菌・消炎治療が中心となる. 外傷のうち内損傷は長期の気管内挿管による肉芽形成や, 気管軟化症となり内腔が保持できなくなる. 外損傷は交通外傷が多い.
瘢痕性の狭窄に対する治療法としては内視鏡下のバルーン拡張や, レーザーでの狭窄切除を行うが再狭窄の可能性が高く, 何らかの内腔保持が必要となる. 狭窄病変の範囲が長い例には喉頭截開術を行って内腔の瘢痕切除術を行い, 残った気管と皮膚を縫合して喉頭気管溝を形成する. 内腔の面積が大きく取れない時は粘膜や軟骨の移植を行う. さらに内腔の保持のためシリコン製の T チューブを留置し, 二期的に気管前面を皮膚や肋軟骨, 鼻中隔軟骨を移植し形成する. 近年大森らは, ポリプロピレンメッシュとコラーゲンスポンジを用い, 生体内で組織再生を誘導する再建技術を開発した. イヌを用いた動物実験で安全性を確認した後に, 2002年より気管の再生医療を開始している.
腫瘍性の狭窄は原因疾患治療が中心となるが, 外科的摘出により気道壁が大きく欠損すると, 再建・形成手術の適応となる. さらに根治が望めない症例では内腔保持のため各種のステント治療が試みられる. 気管壁が75%以上欠損すれば, 気管の端々吻合の適応となる. 約 4cm までの欠損であれば可能とされる.
呼吸器科の分野では気管狭窄に対し人工ステントを使用することが多い. Dumon ステント, Expandable Metallic stent, AERO 気管・気管支用ハイブリッドステントを紹介する.
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