1. 家蚕の集合性行動の存在を確かめるため,1961∼1962年の四飼育期に,(支124×日124), (2:4×5:4),および(銀白×瑞光)の三品種を用い,季節間,令期別に検討した。
2. 桑を与える前の個体を,桑を除いた平面に,等間隔で分散して置き,60分間にわたって各個体の行動を観察し,また単独個体として存在する個体数を5分毎にかぞえた。60分後における非集合個体の全個体に対する百分率は,1961年夏30.9%, 1961年秋12.6%, 1962年春19.6%, 1962年夏10.8%であった。このことは逆にそれぞれ,69.1%, 87.4%, 80.4%, 89.2%の集合率を示すことになる。
3. 実験開始後30分位までに,単独個体は急減,2個体の接近,接触が起り,その後より大きな群に発展する傾向が強いが,大群とはならず4∼6個体を中心とした小群がいくつかできる。
4. 一度接触を経験した個体は,第二体節以上を左右にふる行動や移動行動などを停止し,静止状態に入る場合が多い。
5. これらの傾向は,季節(品種),令期の間に著しい差は無く,家蚕個有の性質といえる。しかし令期間では,若令期程活発に動きまわり短時間に集合するが,再び分散する量も多く,老令期はその逆で単独個体の減る率は遅いが,最後には高い集合率を示す傾向にある。
6. これらのことはklinotaxicな行動が,試行錯誤運動を続けるうちに,接触する機会を生じて集合する結果となることを示している。
7. 以上の結果から,家蚕には集合性行動の存在することが確認された。
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