加齢により手指の巧緻性や運動機能性が低下した高齢者にとって衣服の着脱は容易ではなく, 特にボタンのかけはずしがしにくくなることが指摘されている.
高齢者が着脱しやすい衣服を設計することを目的として,
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ボタンのかけやすさについて高齢女子と20 歳代女子を対象に着用実験を行った. 主な結果は次のとおりであった.
(1) 前ボタンおよび
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ボタンについて, 高齢女子と20歳代女子のボタンのかけはずし動作の時間を比較すると, ボタンかけとボタンはずしの両方とも高齢者の方が長くかかった.特に,
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ボタンをかける時間の加齢による変化が大きかった.
(2)
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ボタンをかける時間について分散分析をしたところ, 20 歳代女子では袖丈, 個人差の 2 要因ともに有意となった. 高齢女子では個人差のみ有意となり, その寄与率は 65.1% と大きかった. 高齢者を年齢グループに分けて分散分析し検討したところ,
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ボタンのかけ動作の時間の個人差は 70 歳代で大きく, 80歳代では 70 歳代と比較して個人差は小さく, 平均値は大きかった.したがって今回の実験範囲では, 70歳代で, ボタンかけ動作が大きく変化するのではないかと推測された.
(3) 20 歳代女子と高齢女子では
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ボタンかけの動作が異なっていた.その方法は2通り観察されたが, いずれも
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ボタンを固定し, 安定させてからボタンをかけていた.加齢により
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ボタンかけ時間が増加する原因の一つとして, ボタンを固定するという動作が加わわるためという興味深い結果が得られた.また, 20歳代女子の場合には手くび点までの長さの袖丈の
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ボタンをかける時間が短いという予測した結果が得られたが, 高齢者では異なる結果であったのは
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ボタンを固定するという動作が加わったためと考えられる.
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