頭蓋において, 鈴木(1985a)が提唱した
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形質の発現機構を探るために, 複数の機能的領域の相互作用によって頭蓋骨の形態は決定されるという観点 (Moss and Salentijn, 1969; Moss and Young, 1960) に立ち, 咀嚼量の減少と
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形質の発現との関連性を検討した。具体的には現代日本人成人男性29個体および女性24個体の頭蓋を用いて, 1)
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形質と解釈できる傾向の有無, 2)咀嚼量の減少と解釈できる傾向の有無, 3)鼻腔形態の個体変異様式, 4)下顎骨の幅成分と鼻腔形態との相関関係, 5)
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形質と鼻腔形態との相関関係, これら5点について統計学的に分析した。その結果, 男性資料では下顎骨と鼻腔の各幅成分が相関を示し, 隣接する機能的領域間の相互作用が示唆された。加えて, 高顔や狭鼻など
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形質と解釈できる形質は鼻腔形態と相関を持ち, 一部の頭部顔面形態の制御機構を鼻腔形態が担う可能性が提示された。しかし, 動物実験ですでに観察されていた, 咀嚼量の減少に伴なう下顎骨の形態変異は抽出されず, 咀嚼量の減少と
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形質の発現との直接的な関連性は示されなかった。また女性資料の分析からは, 男性と部分的に類似する結果が得られたに留まった。
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