奈良県吉野郡下の二か村において検地帳の調査をおこなった。この結果,当地域における茶園について以下のことが判明した。
1) 吉野郡内の多くの地域において,延宝検地をふくむ17世紀の後半に茶畑の開発が行われた。
2) 北曽木村と栃原村の延宝検地帳によれば,開発の年次は,村によって長期にわたるものと短期間で行われたものの相違はあるが,ほぼ寛文・延宝期に当っていた。
3) 開発された茶畑は,生産力の低い下々茶畑ないし,更に下位の下々茶山畑が多く,これも開発年次が延宝検地に近いことを示している。
4) このような急激な茶園の増大をもたらした背景については,目下のところ不明である。
本稿を終えるに当り,史料の閲覧を許して頂いた青木晴夫氏,並びにご教示を賜った吉野町文化財保存会会長 上田龍司氏,県立橿原高校校長 広吉寿彦氏,筑波大学助教授 熊倉功夫博士に深く感謝する。
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