【目的】
近年、小学生から化粧などに関心を持つ生徒が増え、ピアス、ヘアカラー、ダイエット、化粧などの
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採用の低年齢化が目立っている。従来、衣服への関心の高さは指摘されてきたことであるが、衣服のみならず、身体への関心とファッション化が近年の特徴であろう。身体を装飾したり加工することで肉体的、精神的バランスを維持しているかのように思われる。衣服や
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の採用は個人の裁量に任されていることが多く、何が自分に心地良く、自分らしさを表現するのに重要かを学ぶことは、学校教育で全く考えられて来なかった。そこで、本研究では、一般高校生と帰国子女生の
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意識について、調査から採用実態とその意識を明らかにするとともに、家庭科の被服領域での学習を生徒指導に役立てる方法を検討する。
【方法】
2008年7月、神奈川県立高校(2校)、東京都帰国子女高校を対象(男子216名、女子402名 合計618名)に質問紙によるクラス単位の集合調査を行った。調査内容は、1)
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(ヘアカラー、ピアス、眉を整える、アイメイク、ダイエット)の採用実態2)
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意識3) 身体満足度4)ファッション採用時期である。分析方法として、単純集計、クロス集計を行った。
【結果】
1)
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の採用実態について、採用率の高い順に以下に項目を上げる。男子では一般校、帰国子女校とも、「眉を整える(56.5%対32.2%)」「ヘアカラー(28.2%対26.3%)」「ダイエット(14.1%対24.6%)」「ピアス(14.1%対9.0%)」で、女子では「眉を整える(90.5%対90.3%)「アイメイク(78.0%対69.4%)」「ダイエット(65.4%対70.2%)」「ヘアカラー(61.5%対46.6%)」「ピアス(37.9%対43.1%)」であった。男女とも眉を整えている生徒が多く、当り前のこととして受容されている。女子では、帰国子女生より一般校生の方がヘアカラーを採用している生徒が多いが、ピアス採用者については帰国子女生の方が多い。いずれにしても男女とも
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に大変関心のあることがわかった。
2)
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意識について、男女別に学校間比較を行った。その結果、男女ともヘアカラーについては、「気分を変える」「イメージチェンジできる」などの変身効果に肯定的であった。「ファッションに合わせ易い」「流行の髪型に合わせ易い」については、一般校の女子が非常に肯定的で、ヘアカラーはファッションのひとつとして欠かせないものであるようだ。帰国子女校生は、帰国子女生は、多様な生活経験や学びの中から自己を見直す機会に恵まれることなどから、採用率が低く意識も低いものと思われる。ピアスについては、帰国子女校の女子が「ファッションに合わせ易い」という項目に肯定的である。また、自己顕示欲を満たす手段ともなっていることが推察される。変身効果については両校の生徒が重視している。眉を整えることについては、もはや当り前で、変身効果、ファッション効果ともに高い。
【考察】
以上の結果から、現代の高校生は衣服のみならず、
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採用に積極的で、変身欲、自己顕示欲、ファッション欲を満たしていることが推察される。個性化、国際化教育の中で外見を指導するとき、生徒の指導の難しさややりにくさを経験する。「なぜこの服装がだめなのか、
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がだめなのか」を納得できない生徒も多い。規範意識を伝えることも難しい。 今後も、小学生から男女問わず
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を取り入れ、精神のバランスを取っていくのではないだろうか。家庭科被服領域は縮小されつつあるが、モノとしての被服学習のみならず、自我形成に欠かせない被服についてココロとの関係性で捉える必要がある。具体的には、服装の歴史や流行、自己概念や価値観、規範意識や感情と服装や
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との関わりについて心理学を援用するカリキュラムを作成し、自己を見つめ直す機会を作れば、服装指導の一助となるのではないかと考えている。
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