フタル酸カリウムをテレフタル酸カリウムに異性化するヘンケル法については, ヘンケルの特許と小方の報文以外に見るべきものがない。著者らはこのCOOK基の
転位反応
の内容を明らかにするために, まず反応温度, 反応時間, 触媒添加量などの反応条件が反応成績におよぼす影響を試験した。またテレフタル酸カリウムへの
転位反応
の途中で, 種々のベンゼンカルボン酸カリウムが生成されるが, とくに昇温過程( 比較的低温の反応初期) で生成される安息香酸カリウムに注目して, 水分, 試料調製時のpH,炭酸ガス圧の影響等について試験し, 各カルボン酸塩の生成経路と
転位反応
との関係を検討した。その結果反応初期に分子間
転位反応
によって急速に安息香酸カリウムとベンゼントリカルボン酸カリウムが生成され,同時に反応物の溶融がみられた。この溶融が起こると,この両カリウム塩がさらに引き続き分子間
転位反応
を起こして,テレフタル酸カリウムが生成されるものと結論された。また,本反応にとって炭酸ガスの存在は必須不可欠であり,水分の共存は有害であるなどの諸知見を得た。
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