呼吸停止に至るも手術にて救命した巨大結腸症の1例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.精神分裂病にて精神科病院入院中であった.平成15年4月17日傾眠傾向となり当院内科入院となった.腹部は著明に膨満し,圧痛はなく,腸雑音は消失していた.保存的治療をしていたが, 4月18日昏睡状態,血圧低下,心室頻脈,呼吸停止となったため緊急手術を施行した.腸管穿孔は認めなかった.小腸に拡張はなかったが,大腸は盲腸から肛門管直上まで著明に拡張し, S状結腸は黒褐色に変色し壊死を疑わせた.大腸全摘術,回腸人工肛門造設術を施行した.術後1日目には呼吸状態,循環動態は改善し術後70日で軽快退院した.自験例のごとく著明に拡張した大腸が原因で呼吸停止に至った場合,開腹する事により腹腔内圧は減少し呼吸循環不全が改善され,救命することが可能となるため,積極的に手術的治療を行うべきであると思われた.
抄録全体を表示