EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,歯欠損成因解明の有用なモデルマウスである。また,てんかんおよび上顎第一臼歯歯根の癒合のモデルマウスとしても知られている。著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウスの第3番染色体の61.8から662センチモルガン(cM)の間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したELコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することを証明し,この遺伝子を
absence of the third molars(am3)としたことを報告している。今回ELコンジェニックマウスを用い,第三臼歯の欠損部位を上下顎左右側別に記録し,
am3の効果が部位ごとに差があるかどうかを検討した。また,ELコンジェニックマウスにおける上顎第一臼歯歯根の癒合と痙攣の発症頻度を求め,
am3と癒合根およびてんかんの発症が独立しているか否かを検討したところ,以下のような知見を得た。
1.ELコンジェニックマウスが有した第三臼歯数は上顎が下顎よりも有意に多く,このことから
am3は上下顎ともに第三臼歯欠如に影響するが,上顎第三臼歯欠如に対する影響の方が強いことが示唆された。
2.ELコンジェニックマウスで認められた上顎第一臼歯歯根の癒合と痙攣の発症頻度は,EL/Seaマウスの発症頻度と統計学的に差がなかったため,
am3は癒合根およびてんかん発症には関連が低いことが示唆された。
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