有機過酸化物および有機色素とを複合開始剤とする可視レーザー記録用の高分子材料の開発,および固相マトリックス中における重合挙動を速度論的に考察した。
光重合系感光材料の開始剤として有機過酸化物とキノリン系,チアゾール系,キサンテン系またはメロシアニン系色素とを組み合わせて使用すると,500~600nm前後の可視光に高い感光性を示すことが明らかになった。ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP)中におけるペンタエリトリトール=トリアクリラートの光重合開始剤として,ジ-t-ブチル=ジペルオキシイソフタラートと2-(ρ-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾールとを組み合わせて用いると,488nmのアルゴンレーザー光に対して300μJ/cm
2の感度を示し,レーザー描画装置による走査速度11.1m/sでの記録が可能であった。固相マトリックス中における初期重合速度(R
p)は,溶液系から導かれた速度式にしたがい,また実際の感光特性とR
pとがよぐ対応した。R
pはマトリックスポリマーの影響を受け,PVPやポリ(オキシエチレン)などのポリマーは,ほかの汎用ポリマーに比較して高い値を示し,ポリマー鎖とモノマーとの間の特殊な相互作用による結果と考えられた。
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