歯科保健サービスの提供において重要な役割を担う全国の公的機関に勤務する歯科衛生士を対象に,現在のフッ化物応用を中心としたう蝕予防方法に対する知識および意見を知ることを目的として質問紙調査を行った。歯科保健対策構築のためのプロセス分析のツールとして有効性が認められているプリシードモデルを採用し,教育・組織診断プロセスの構成要因である準備要因,実現要因,強化要因に基づいて質問紙を作成した。その他に行動診断として,具体的なう蝕予防方法の優先性についても質問した。結果は,次のとおりであった。1.準備要因においては,う蝕予防のためのフッ化物応用に関してかなり正しい知識を有しており,予防活動に対しても積極的態度を示した。しかしながら,フッ化物応用の安全性については局所応用へは肯定的意見が多かったのに対し,水道水フッ化物添加については認める者が40%以下であった。2.予防事業を進めるための予算や人材等の実現要因に対しては,すべての項目において半数あるいはそれ以上の者が不満を示した。また,強化要因である周囲のサポートおよび理解等についても,十分に得られていないとする回答が多かった。3.行動診断である最優先すべきう蝕予防方法の選択については,プラークコントロールや間食指導を第1位とする者が多く,フッ化物応用については水道水フッ化物添加などの全身的応用方法への支持が少なかった。
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