1925年から2011年までに採集された標本を用いて,四国のミバエ類の分布記録の更新を行った.また,四国の森林植生の垂直分布とミバエ類の地理的分布に注目して四国のミバエ相の特徴を明らかにした.新記録11種を含め,四国から79種のミバエ類を明らかにした,それらは四国に分布するミバエ類の種数の90%に達していると考えられる.四国のミバエは四国の代表的な自然植生と代償植生に広く分布しているが,ミバエ類の種構成は自然植生と代償植生の間よりも潜在自然植生の間,特にヤブツバキクラスとそれ以外の間で異なること,が明らかになった.徳島・愛媛・高知県の山地に見られる自然植生は,四国のミバエ類群集の中核となる種群の生息地であると考えられた.石鎚山系,高城山周辺地域を含むこれらの地域はヤマケブカミバエ,シシウドハマダラミバエ,クロミスジハマダラミバエの分布の南限としても重要である.これらの地域の自然植生の保護は,四国のミバエ群集の中核および地理的に孤立した個体群を維持するために重要であると考えられた.
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