都市域における大気エーロゾル(TSP)中のイオン成分の動向からその動態や化学的な根拠を解明するために,都内の5地点における5年間の調査を実行し,実験を行った。
採取は大量大気捕集器を使用し,5地点で1993年5月から1998年3月までの毎月1回24時間(ただし,山間地の小河内は72時間)行った。
TSP濃度は,ろ紙に捕集されたエーロゾルを重量法により測定し,大気捕集量から求めた。また,抽出した試料からpH,EC,カチオン,アニオンをそれぞれ測定した。
TSPは,5年の間で1995年11月を境にして変動が大きくなる動向を示し,都市域の濃度は,山間地の2.4倍以上であった。
総イオン成分量は,EC値により代用できることが明らかになった。
[H
+]濃度は,都市域より郊外,山間地の方が高くなる傾向を示した。また,H
+を保持するための対イオンは,ろ紙の保持実験および観測された[H
+]濃度と[SO
42-]濃度との相関性からSO
42-であることがわかった。さらに,[SO
42-]濃度は山間地よりも都市域,郊外で高い濃度であることから,中和される前のH
2SO
4の濃度も同様に高いことが推測された。
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