韓国において, 収量の上で耐塩性が異なるとされている水稲品種, 6品種にNaCl処理を施し, 幼植物の相対生長率(RGR)の低下程度を比較した. RGRの低下が小さかった品種を耐塩性の高い品種, RGRの低下が大きかった品種を耐塩性の低い品種とした. RGRを葉面積比(LAR)と純同化率(NAR)とに分割し, 各々に対するNaCl処理の影響を調べたところ, NaCl処理によるLARの低下程度には耐塩性の低い品種と高い品種との間に大きな差はなかった. しかし, NARの低下程度には両品種群間に大きい差が認められ, 耐塩性の低い品種で, 低下程度が大きかった. そこで, NaCl処理をした植物体の単位葉面積当り光合成速度(LPS)を比較したところ, NARの傾向と同様, その低下程度は耐塩性の低い品種で大きい傾向を示した. このことから, イネの乾物生産速度に対するNaClの影響は, 主にLPSを通じて起こっていると考えられた. さらに, LPSにおける耐塩性の機構を知るために, 耐塩性の高い品種と低い品種を各1品種ずつ選び, NaCl処理をした植物体の葉身における炭酸固定酵素, Rubiscoの含量および葉身の浸透ポテンシャルの低下程度を調べた. 耐塩性の高い品種では, 低い品種に比べ, 吸収Na当リRubiscoの含量の低下程度は小さく, NaによるRubisco合成の阻害が小さいことが示唆された. また, 耐塩性の高い品種では, NaCl処理後の葉身の浸透ポテンシャルの低下がより早く進み, 浸透調節能力が勝っていると考えられた.
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