1. 親和度と接触度とは正相関関係にある。相関係数は+0.4~+0.6でかなりの相関度があると言える。
2. 親和度・接触度ともに性差は有意であり、いずれも女児が高い。家族型差は有意でなかった。職業別には大体有意差が認められ、親和度・接触度ともにホワイトカラー群は1位、ブルーカラー群は3位である。自営業群は親和度は2位、接触度は4位を占め、農家群はその逆であった。しかし自営業群・農家群ともにそのグループ内では1の命題が成立している。
3. 母就労による有意差は全体としては親和度には見られたが、接触度ではみられなかった。有意差があったのは、母就労率の高い郡部において親和度が低く、ホワイトカラーにおいて接触度が高いことである。これらの点については今後なお追求すべき問題を残している。
4. 職業差・家族型差ともに有意であったのは2項目である。その共通項目の1である在宅率は拡大家族では構成上予想されたことであり、既知の知見から家族型は職業の従属変数とみられるから、職業差としてあらわれたのは当然であろう。他の1である夕食時に揃う率については、拡大家族は揃う率も高いがいつもいない人のある率も高かった。この傾向は農家群と自営業群に似ていたことも上述の事情を思わせる。以上2項目以外のおやつの食べ方・手伝いに対する親の要求率・一しょの遊びなどは家族型を問わず職業にともなう生活パターンを示すと考えられる。また性差について有意であった項目をみるとおやつやこづかい帳にみるように女児に対して保護的であり、一方仕事の例にみるようにしつけ的働らきかけもより大きいことが女児の接触度を高める一因をなしているといえよう。
次に若干の考察と残された問題を述べて結びとする。
相関係数の大きさがこの程度であることは、親和度に作用する要因が接触の頻繁さのみでないことを改めて思わせるので、なお追試験と検討を重ねなければならない。「テレビの児童に及ぼす影響」の調査結果報告では、物理的接触と親和度の連関性はテレビなしの群には認められたがテレビありの群では認められなかった。本調査は物理的な接触量ではなく質的側面から接近し、テレビの普及度がきわめて高い時点において、テレビの有無にかかわらず行なって依田氏の「テレビなし」群と同様の結果を得た。ここにおいて第2報で述べた接触の様態が再び問題になるので、なお方法の密度を高めつつ吟味を重ねたい。
家族については家族型の差を求めた結果、家族構成に基づく特徴がより顕著にあらわれた。家族人数規模別にみればより詳しく接触との有意差がみられた項目もあると思われる。
職業群では、ホワイトカラーの都市的性格やそれに準ずるブルーカラーの性格、また農家の特徴は窺い知られたが、自営業群が概ね市街地にあり、都市的要素とともに一面拡大家族のもつ伝統的な行動様式をもつこと、他群に比し接触度は低いのに親和度は高いことなどの特徴を示した。この群をより詳細に観察する必要がある。接触の状況については、接触に好適な条件を列挙するまでに至らなかったし、未発表資料も加えて次の機会に十分に展開したい。また、このような自計式の調査を補って理解を深めるため、事例の直接観察も試みるつもりである。
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