【はじめに,目的】
当院の入院高齢患者における低栄養患者の割合と低栄養患者における疾患特性を調査し,低栄養患者に対するリハビリの一助とすることである.
【方法】
対象は,令和2年4月から令和3年3月までの1年間で当院に入院した1714名のうち65歳以上とした.術後抜釘目的の患者や血液データに欠損のあった患者,再入院患者は除外した.方法は,入院時に栄養スクリーニングとして,Controlling Nutritional Status(以下,CONUT),Nutritional Assessment-short form(以下,MNA-SF)を用いて評価し,低栄養患者の割合を調査した.また疾患より
骨折群と非骨折
群に分類し,疾患特性を調査した.
骨折群については高齢者の四大骨折
である橈骨遠位端
骨折
,上腕骨近位端
骨折
,大腿骨近位部
骨折
,脊椎圧迫
骨折
での疾患特性を調査した.
【結果】
調査対象は術後抜釘目的の患者73名,血液データ欠損のあった患者4名,再入院患者2名を除いた717名であった.717名のうち,CONUTスコアから栄養障害(軽度,中等度,高度)と判別されたのは350名(48.8%),MNA-SFスコアから低栄養のリスクありもしくは低栄養と判別されたのは393名(54.8%)であり,おおよそ半数程度の患者に栄養状態の問題があった.
骨折群と非骨折
群との比較では,
骨折
群が297名,非
骨折
群が420名で.年齢,性別,BMI,CONUTスコア,MNA-SFスコアの全ての項目において有意差があり(p<0.01),
骨折
群は年齢が高く,女性が多く,BMIが低く,CONUTスコアが高く,MNA-SFスコアが低かった.CONUTスコアから判別する栄養レベルは
骨折
群で軽度が169名(56.9%),中等度が23名(7.7%),高度が1名(0.3%)であり,非
骨折
群は軽度が141名(33.6%),中等度が15名(3.6%),高度が1名(0.2%)であった.またMNA-SFスコアから判別する栄養状態は
骨折
群でAt risk が154名(51.9%),低栄養が59名(19.9%),非
骨折
群ではAt riskが166名(39.5%),低栄養が14名(3.3%)であった.四大
骨折
別ではCONUTスコアより橈骨遠位端
骨折
は軽度が31名(56.4%),中等度および高度はいなかった.上腕骨近位端
骨折
は軽度が9名(64.3%),中等度は1名(7%),高度はいなかった.大腿骨近位部
骨折
は軽度が58名(65.2%),中等度が12名(13.5%),高度はいなかった.脊椎圧迫
骨折
は軽度が45名(60.8%),中等度が5名(6.8%)で,高度が1 名(1.4%)であった.またMNA-SFスコアより橈骨遠位端
骨折
はAt riskが31名(56.4%),低栄養が2名(3.6%),上腕骨遠位端
骨折
はAt riskが10名(71.4%),低栄養が1名(7.1%)であった.大腿骨近位部
骨折
はAt riskが40名(44.9%),低栄養が37名(41.6%),脊椎圧迫
骨折
はAt riskが41名(55.4%),低栄養が16名(21.6%)であった.
【結論】
高齢入院患者の約半数が栄養状態不良であった.また
骨折群と非骨折
群を比較すると
骨折
群で栄養状態不良の患者が多く,高齢者の四大
骨折の中では上肢骨折
患者と比べ,大腿骨近位部
骨折と脊椎圧迫骨折
患者の栄養状態が不良であった.
【倫理的配慮、説明と同意】
本調査は札幌円山整形外科病院倫理委員会の承認を得て実施した.
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