抄録
1982年6月から1991年5月までの10年間に名古屋大学医学部附属病院歯科口腔外科に入院して治療を行った65歳以上の顎顔面骨骨折患者を対象にその実態について検討した。対象となった老年顎顔面骨骨折入院患者は8例 (男性6例, 女性2例) であった。年齢は65歳から85歳にわたっていた (平均71.6歳) 。観血的整復術を施行した症例は5例, 非観血的処置を施行した症例は3例であった。骨折部位は上下顎骨骨折2例, 上顎骨骨折1例, 下顎骨骨折4例, 頬骨骨折1例であった。受傷原因は転倒5例, 交通事故1例, 作業中の事故は2例であった。なお, すべての症例に基礎疾患の合併を認め, 多数歯欠損症例が多かったため, その処置と固定に際して苦渋した。多様な病態を示す老年顎顔面骨骨折患者の診療を考察し報告する。