第二次世界大戦後の木材価格と需給構造に関する近代経済学的アプローチによる研究は, 赤井, 半田, 岸根, 野村の4 氏に代表されよう. 本稿ではこの4氏の研究成果を中心にその後の研究成果も含めて検討し, 今後の方向を示唆する一助としたい. 検討の結果は以下のとおりである. (1) 赤井は,木材価格変動を上昇期, 下降期の趨勢変動に注目して期間を区分し, その間の需給構造の変化から各期の上昇, 下降の傾向を検証した. (2) 野村・半田の価格論争において, 価格弾性値は分析期間, 対象品目また需要, 供給関数の推定結果の確かさにより異なるものの, 野村の指摘のように国産材需要, 供給の価格弾力性の推定結果は, 岸根やその後の研究を含めても0.2∼0.5 ほどでともに非弾力的であると推察される. (3) 高度経済成長期は以前とは違って需要のシフト要因と補完材というよりも代替材としての外材の影響が特に顕著となったことが指摘される. (4) また岸根の供給行動を効用理論で説明するのは些か無理があり, 貨幣と留保需要(固定的供給量) の効用最大の選択問題とするよりも固定的供給量(利用可能蓄積量) を, 期待価格のもとに今伐るか将来伐るかの利潤最大の選択問題とした林家の経営行動とした方が妥当であろう.
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