我が国のコメ生産は、不安定な気象条件や地力低下による収量・品質の低下が懸念されている。また、外国産や他食料品との競争力強化が課題となっている。このような状況下、ICTの発達により収集が容易になりつつある、農業データを有効活用するための解析手法の開発が求められている。本研究は、1)生産現場で収集したデータを用いて精玄米収量の低・中・高のクラスを予測する
モデル
を作成すること、2)収量予測
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を用いて収量の制限因子を明らかにすること、3)収量の改善指針を検討することを目的とした。予測
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の作成にはサポートベクターマシンを用いた。また、
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作成には、2011~2016年に福岡県糸島市において実施した延べ90枚の水田調査(品種ヒノヒカリ)により収集したデータを用いた。作成
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は、籾数、出穂後5日から登熟後期の期間の日平均日照時間、および幼穂形成始期から登熟後期までの無機態窒素の供給量の3つの説明変数を含み、正答率は77.8%であった。低収量クラスの水田では、特に幼穂分化期の茎数が少なく、籾数が収量の制限因子となった。また、中収量クラス、および高収量クラスの籾数が2.8万m
-2以上の事例において、登熟期の無機態窒素の供給量不足が制限因子になった水田が確認された。収量改善の指針として、低収量クラスの水田において栄養生長期の茎数増加による籾数の確保が、登熟期の窒素供給不足が制限因子になった水田では、追肥を2回に分施し、地域の施肥基準の窒素量3.6kg/10a程度を施用することが挙げられる。この追肥の指針は、生産現場の調査事例に基づく解析が、地域の栽培試験や現場の試行錯誤により決定された基準を支持したことを意味する。
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