長期血液透析患者に合併した褐色細胞腫を経験し, 血漿カテコラミン値, 画像診断所見および術前後の管理などについて文献的考察を加えて報告した. 患者は47歳, 男性で約18年間維持血液透析を受けていたが, acquired cystic disease of the kidney (ACDK) のfollow-up中にCT scanで右副腎腫瘍が発見され17か月の経過で腫瘍は約3倍に増大した. MRI所見からは褐色細胞腫が強く疑われた. 臨床的に当初は無症状であったが, 腫瘍の増大に伴い軽度の昇圧発作が時々認められるようになった. しかし, 自然軽快することと血漿カテコラミン値が正常であったため診断が遅れる結果となった. 血圧は正常であったので術前のα
1-blocker投与は行わずに手術を施行した. 術中術後の血圧, 脈拍変動は軽度で少量のCa-antagonist投与と洗浄赤血球輸血で容易にコントロールされた. 術後の血漿カテコラミン値も術前と同等であり, 腫瘍からのカテコラミン分泌の少ない低活性の褐色細胞腫と考えられた.
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