近年景気対策として公共事業が行われる一方その効果が疑問視される場合も多く、事業計画に関する意思決定システムの問題性が指摘されるようになった。そこで我が国の公共事業の特徴を把握するための一方策として、高速道路整備制度の国際比較を試みた。
我が国と独、仏、英、米の制度を比較検討した結果、住民参加、事業評価、情報公開がキーワードとして挙げられた。
インフラ先進国といわれる独、仏、英、米においては、社会基盤は住民のためのものであり、したがって整備主体も住民でなければならないという思想がゆきとどいていると思われる。
我が国は事業評価手法そのものに関する研究は進んでいるが、実際の事業に適用させるためのシステムが確立されているとは言い難いと思われる。
住民参加にせよ、事業評価にせよ、実現のためには事業主体の透明性確保が強く要求されるため、情報公開が最も重視されなければならない。アメリカのように法によって規定されていなくとも、独、仏、英では道路計画に関する情報の公開は半ば常識化している。
我が国において情報公開にもとづく公共事業の意思決定プロセスの導入を妨げているひとつの要因として、建設業就労者の雇用確保問題があると推察される。事業主体は予算を残さないで消化しつつ、多くの事業を実施しようとするために、時間と手間のかかる住民参加・事業評価・情報公開を積極的に導入するインセンティブが働きにくいと思われる。
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