In vivoにおける薬効が優れているといわれる新しい合成ベニシリン剤TA-058の胆道感染症について基礎的・臨床的研究を行った。
1) T-tube挿入例において, TA-0581g静注後の胆汁中濃度をTIPC1gとのcrossover法にて比較検討した。TA-058, TIPCともに2時間後に最高胆汁中濃度に連し, それぞれ246.5μg/ml, 66.6μg/mlであり, TIPCの3.7倍高値を示した。
2) TA-0581g静注後の胆嚢胆汁中濃度は, 胆嚢管閉塞 (3例) と感染胆汁による分解例を除いた5例では平均218.9μg/mlと高い濃度が得られた。2時間後の胆察組織内濃度 (9例) は平均18.1μg/gであった.
3) TA-058およびその代謝体であるPenicilloic acid, 5-epi-penicilloic acidをHPLC法を用いて分離同定した。このTA-058のChemical assay法とBieassay法との相関係数はr=0.998であった。胆汁中には代謝体が12.9~31.4%(平均24.6%) 存在したが, 3週間-20℃冷凍保存後では約30%に増加した。
4) 胆嚢炎12例, 胆管炎11例, 計23例に対してTA-0581g1日2回静注または点滴静注にて5~9日 (平均7日) 間投与した際の臨床的効果は, 著効3例, 有効16例, やや有効2例, 無効1例, 不明1例で, 有効率86.4%であった。細菌学的効果は,
E.coli, Klebsfalla, C.fregsndii, S.faecalisは消失したが,
P.ueruginosa, B.fragilts, Enterobacterが残存または出現した。副作用は, 基礎的検討予防投与例を含めて, 39例中1例も認められなかった。
以上, TA-058は胆汁中へ高濃度に移行し, 胆道感染症に対して有用な薬剤の1つといえる。
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