【目的】
二分脊椎症患者における清潔間欠導尿は症候性尿路感染の発生頻度を減少させることが できると言われている。また、社会生活の自立を促す上でも清潔間欠自己導尿(以下、
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)の獲得は必要と思われる。二分脊椎症の本児は、今後の社会生活の中で
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が必要と考えられていたが、泌尿器科主治医より自宅での訓練不足を指摘されていた。小児リハビリテーション(以下、小児リハ)担当によるカンファレンスの結果、小児リハ専門機関への教育入院を勧めたが不安感が強く当院であれば可能と言われた。今回、小児リハの教育入院が未経験の中で自己導尿の獲得までに至った経験をここに報告する。
【症例紹介】
小学校高学年、女性。嚢胞性二分脊椎。アーノルドキアリ奇形II型。Hofferの分類4NonAmbulator。Sharrard1 群ThW/C レベル。肥満体形。GMT 上肢5/5。感覚障害Th10 以下脱失。基本動作寝返り自立、起き上がり自立、あぐら坐位自立。BatthelIndex45/100 点、食事10、移乗15、整容5,トイレ動作0,入浴0,平地歩行5、階段0,更衣10,排便0,排尿0。輻輳反射(-)、固視(-)、眼球運動障害下方で虚弱。言語知能発達:LCSA 指数46(4 歳4 か月程度)。
【経過】
理学療法と泌尿器科受診は1 歳時から介入しており、日常生活動作獲得や導尿目的に通院をしていた。就学前から外来泌尿器科による
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指導を行っていたが獲得できず現在まで経過し、主治医より本児は自宅での訓練不足を指摘される。中学就学時に
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が必要であると、母親や学校から相談され小児リハ専門機関への教育入院を勧めたが困難と言われる。当院での教育入院を希望されたが、外来小児リハの教育入院は前例がなかった。教育入院に向けて主治医と看護部に相談し、協力を依頼。入院前カンファレンスを行い、目的や指導内容、注意点の確認を行った。入院後
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を行う上で会陰部を開きやすくするための開脚が不十分であると評価し、下肢の開脚姿位拡大のために補助具を作成。補助具やポジショニングによる安定した姿勢確保に成功し、
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の獲得につながった。本児もパンフレットの教育や成功体験、反復訓練により排尿セルフケアを認識し始めた。母親に対しても再度指導を行い、自宅へ退院となる。
【考察】
本児の
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は、体幹の姿勢保持と会陰部を開きやすくするために長座位での股関節屈曲・外転・外旋の拡大が必要であった。理学療法によるポジショニングや補助具のアプローチで姿勢保持ができ、両上肢機能を自由に動かせることがカテーテル挿入につながったと考えられる。また、集中的な指導で排尿セルフケアに対する認識や意識付けを獲得させることも
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につながり今後の継続のためにも必要である。教育入院は多方面から問題点の抽出や指導を容易にさせ、排尿セルフケアの認識に対しても有効であった。本児が社会自立を目指すために未経験であった教育入院の取り組みは課題が多かったが、理学療法士としてコーディーネーターの役割を果たすことも重要であると感じた。
【まとめ】
訓練不足だけでなく、理学療法評価やアプローチを行うことで、
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の獲得につながる。教育入院は排尿セルフケアの認識に対しても有効であった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本発表は、ヘルシンキ宣言に基づきご本人・家族に説明し、文章にて同意を得た。
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