Apristunes sibogae (Weber, 1913) はインドネシァ, マカッサル海峡で採集された1個体の雌若小標本に基づいて記載された.近年著者は本種の知られている唯一の標本でもある完模式標本を調査し, 当該標本は現在全体が極めてもろくなって壊れやすく, しかも収縮変形が著しいことを知った.本種については, Weber (1913) の簡単な原記載以後, 何回か模式標本の記載がなされているが, これらはいずれも収縮し, 変形した状態をそのまま記載しており, 種の特徴が誤って述べられている.極めて脆弱な状態にある模式標本およびその不十分で誤った記載を考えると, 近い将来本種の正確な特徴が失われてしまう恐れが強い.そこで, Weberの測定値と現在の測定値を比較し, 収縮率を求めることにより, 本種の完模式標本を復元し, 再記載することを試みた.その結果,
A. sibogaeは短い吻, 短い腹部, 後方に始まる第1背鰭, 第2背鰭よりかなり小さい第1背鰭, 歯数, 腹椎骨数などの形質で日本のヘラザメ
A. platyrhynchusに極めて近似しているが, 両眼間隔, 第2背鰭と臀鰭の位置関係などに差異がみられ, これらは現在のところ種的な差異と判断された.
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