大学で生み出された研究成果の産学連携による社会還元のためには,
企業
の事業化ニーズと大学の研究シーズを早い段階から共有化して共同研究を進めることが重要である。本論文では,産学共同研究の創出プロセスに焦点を当て,そのメカニズムの解明を試みた。分析対象として東京大学産学連携本部で運用されているProprius21と呼ばれる共同研究創出マッチング・プログラムのデータを用い,さらに
企業
の研究開発特性を,売上高研究開発費比率と特許の国際特許分類(
IPC
)のサブクラス数によってマッピングするという手法によって分析し,マッチング・プログラムを運用するプログラム・オフィサーへのインタビュー調査も加味して,産学共同研究の創出メカニズムを分析した。その結果,東京大学では全学の産学共同研究の中でProprius21プログラムから創出される共同研究の割合が年々増加しており,マッチング・プログラムの有効性が確認された。Proprius21の新規共同研究創出効果を業種別,研究分野別に分析すると,情報通信分野での貢献度が特に高く,共同研究数の多いライフサイエンス分野での貢献度は低いことがわかった。さらに,
企業
の研究開発特性のマッピング分析から,Proprius21のような組織連携による産学のマッチング機能は,幅広い技術分野にわたり事業を行い,研究開発に積極的な
企業
との共同研究創出に有効であることが明らかになり,このような
企業マッピングが共同研究対象企業
選定の際に有効な指標と成り得ることがわかった。
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