「作庭記」から「ありやう-様-おもはえる-まねび-いかにも」の一連の語句を抽出し,その各項目を概観することによって,作庭の概念形式から造形表現に至る過程を考察した。「ありやう」は実空間をともなわない「あるべき姿・形」である。この概念は広く一般に認知されて「様」を形成している。作庭の「ありやう」は「生得の山水・国々の名所」であり,造形表現に至る間に「おもはえる・まねび」の過程が存在していた。一方,概念としての「ありやう」は,「様」から実体への表現に当って,敷地・立地・建屋機能・属性等々種々の制約を受け,1つの「ありやう」は千変万化の「見せかた」となり,ここに創意・作意は発揮された。「見せかた」は「いかにも○○の見えかた」でなければならない。「作庭記」における概念形式から造形表現に至る過程を考察することにより,日本作庭手法の特質,および日本芸術における造形手法の特質の一端を解明しようとするものである。
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