【はじめに】 滋賀県では、平成29年度より「地域共生社会」の構築に資するリハビリテーション(以下、リハ)専門職の育成を目的に人材育成研修を実施している。今回は、その研修中に、リハ専門職を対象として実施した「地域資源等に関する認知度調査」の結果について考察を加え報告する。
【目的】 国は、「地域共生社会」を目指すという方向性を打ち出した(平成29年2月)。「共生」を考えるためには、高齢、成人、小児といった区分を越えて様々な地域資源等について認知、理解しておく必要がある。本調査はその前提として、リハ専門職の地域資源に関する認知度を測ることを目的に実施した。
【研修の概要】 本研修は、地域の資源や関わる支援者と協働しながら、障害やライフステージに応じて本人が望む「活動」や「参加」に結びつけることができるリハ専門職を育成し、更に地域共生社会や地域包括ケアシステムに係る市町の政策にも関わることができることを目的としたプログラムである。医療機関を中心としたリハ業務では関わりが薄いと考えられる「障害領域にかかる教育や就労」、「産業保健」、「障害者スポーツ」などの実際を知ることと、自らの考えを施策展開に結びつける方法等について学ぶもので、10日間にわたり、座学と現地研修で合計約38時間の研修とした。受講対象は、県内で地域リハに関心を持ち、3年以上の臨床経験を有するリハ専門職(理学療法士(以下、PT)、作業療法士、言語聴覚士)とした。
【対象】 研修参加者は42名で、最終的に研修修了者は35名(83.3%)、PTが21名(80.8%)であった。調査結果の分析は、研修修了者の中から調査に回答した26名(61.9%)を対象とした。
【方法】 地域で支援にあたる上で関係すると考えられる地域資源等に係る19のキーワードをピックアップし、その認知度を4件法(1;よく知っている)にて調査した。また、調査は研修会の実施前と修了後に実施し、その変化について比較した。研修前後の結果の比較は、キーワード毎にWilcoxon符号付順位和検定を用い有意水準5%で行った。
【結果】 地域資源の認知度調査では、介護保険など高齢介護に係るワードは、PT協会をはじめ職能団体が研修を実施しており認知されている傾向にあった。しかし、障害に係るワードでは、高齢者に係るワードほど認知されているとは言えない結果であった。但し、研修受講後は認知度が改善されていた。
【考察とまとめ】 現在リハ専門職は、市町村が実施する介護予防事業など高齢者に対する施策を中心に支援を始めている。しかし、地域で支援を必要とする対象は高齢者だけではなく障害児者等も対象であり、そういった方が活動する領域は多岐に及ぶ。国が目指す「地域共生社会」の構築を推し進める上においても、リハ専門職に期待されるところもあり、そこで職能を発揮し地域貢献を果たすためには医療や介護以外の地域資源や状況について理解を深める必要があると考える。
【倫理的配慮,説明と同意】今回の演題について開示すべきCOIはありません。また、発表にあたってデータの使用については同意を得ており、また個人が特定されないよう配慮しました。
抄録全体を表示