対話的計算機システムにおける, ユーザの挙動を利用した個人認証手法を提案する.本方式は, 監視するユーザの挙動を表すためにユーザの入力したコマンド連鎖を用いる.ユーザモデルは, 正当なユーザごとにあらかじめ一定期間に入力されたコマンドの連鎖の使用頻度を解析して作成しておく.認証は過去に作成しておいたユーザモデルと比較して, コマンド連鎖の使用頻度が似ているかどうかで判断を行う.我々はこれまでにコマンド連鎖の使用頻度を表すために, 遷移確率を用いた確率による手法を提案した.ここでは確率に代わりファジィ測度の手法を利用することを試みた.手法の有効性について検討するため, 被験者26人による6ヵ月間のログデータを用いたシミュレーション実験を行った.実験はユーザモデルを作成する学習フェーズと正当なユーザかどうかを判断する検査フェーズの2つのフェーズにより行った.学習フェーズでは, ユーザモデルの生成にファジィ測度の手法による連鎖グレードを用いる.連鎖グレードは, 学習期間中に出現したコマンド連鎖の頻度が高いほど, より高いグレードを表す.検査フェーズでは, 認証評価にはλファジィ測度の手法によるコマンド連鎖の組合せグレードを用い, ショケ積分の手法を採用して判定した.組合せグレードは, 検査コマンド列について, コマンド連鎖の組合せの数が多いほど, より高く評価する.その結果, 確率を用いた手法では70%程度であった他人排除率が, 92.8%と大きく向上した.さらに, 認証にはコマンド連鎖の出現頻度よりも, むしろ異なるコマンド連鎖の組合せの方が効果があることが分かった.
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