Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
中世日本人の頭蓋形態の変異
長岡 朋人静島 昭夫澤田 純明平田 和明
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キーワード: 頭蓋, 中世, 鎌倉, 変異
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2006 年 114 巻 2 号 p. 139-150

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抄録

本研究の目的は,近年資料の蓄積が著しい関東地方の中世人頭蓋の計測を行い,そのデータと文献から収集した頭蓋計測値に基づき関東地方の中世人頭蓋の地域内変異を明らかにすることが第一点である。第二点目は,関東地方と北部九州・山口地方の中世人との比較から中世人頭蓋の地域間変異を考察することである。今回,計測した資料は,鎌倉~室町時代前期の鎌倉市由比ヶ浜南遺跡(単体埋葬墓),中世集団墓地遺跡(No. 372),極楽寺遺跡,室町時代後期の東京都鍛冶橋遺跡,丸の内遺跡から出土した成人男性頭蓋である。文献データとしては,鎌倉~室町時代前期の鎌倉市の由比ヶ浜南遺跡(集積埋葬墓),材木座遺跡,室町時代の北部九州・山口地方の吉母浜遺跡から出土した成人男性頭蓋の計測値を引用した。関東地方の中世人頭蓋は長頭・低顔・歯槽性突顎の傾向が強く,その特徴は他の時代には認められないほど顕著であることが分かった。特に,極楽寺遺跡,材木座遺跡出土の中世人でその特徴が著しかった。関東地方の中世人の頭蓋形態は時期とともに変化し,中世の後期人ほど江戸時代人や現代人との類似性を示した。また,北部九州・山口地方の中世人頭蓋も長頭・低顔・歯槽性突顎を特徴とするが,関東地方のいずれの中世人に比べても現代人頭蓋に類似することが分かった。

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© 2006 日本人類学会
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