日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
チーズの風味成分に関する研究
III. Asp. oryzaeによるチーズカード熟成中の揮発性遊離脂肪酸生成に及ぼす脂肪含量の影響
中西 武雄中沢 勇二
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 35 巻 2 号 p. 98-106

詳細
抄録

Asp, oryzae chosen Bによるチーズカド熟成中における揮発性遊離脂肪酸の生成に及ぼす脂肪含量の影響について検討した.そのガスクロマトグラフィーによる分析結果は次の如く要約される.
1. チーズカード熟成中その乳脂肪のグリセリドから,揮発性脂肪酸の遊離が著しく進み,酪酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸が検出された.
2. 全脂乳カードでは,次のように揮発性酸であるイソ酪酸,酪酸,イソバレリアン酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸の消長が認められた,これらの酸のうち,酪酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸の量が特微的に多かつた.カプロン酸,カブリル酸,カプリン酸は,乳脂肪のグリセリドから遊離した酸量よりも少なく,酪酸は逆に多かつた.
3. 脱脂乳カードでは,次の揮発性酸が消長を示した.すなわち,酢酸,プロピオン酸,イソ酪酸,酪酸,イソバレリアン酸,バレリアン酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸であるが,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸の量が少なかつた.
4. 脱脂乳カード中に存在する脂肪量が増加すると,酪酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸の量は増加したが,酢酸,プロピオン酸,イソ酪酸,イソバレリアン酸の量は減少した.このように,Asp. oryzae chosenBによつて熟成したチーズカードでは,脂肪含量と熟成日数の影響によつて,揮発性遊離脂肪酸は特微的な分布を示した.
なお本研究は綜合研究「チーズの熟成に関する基礎的研究」の一部として,また新技術開発事業団開発中のオリーゼチーズ製造法工業化の基礎研究として行なつたものである.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top