日本線虫学会誌
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本報 (英文)
フスマを用いた土壌還元消毒における揮発性脂肪酸の生成と殺線虫活性
片瀬 雅彦久保 周子牛尾 進吾大塚 英一竹内 妙子水久保 隆之
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2009 年 39 巻 2 号 p. 53-62

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抄録

小麦フスマの施用、一時的な湛水化およびマルチを組み合わせた土壌消毒法(土壌還元消毒、RSD)の作用機構を明らかにした。室内試験において、RSDにより土壌の酸化還元電位は-200mV以下に低下し、土壌溶液中に9.8 から10.8 mMの酢酸およびn-酪酸が48時間で検出された。この10mMの揮発性脂肪酸(VFAs)にサツマイモネコブセンチュウMeloidogyne incognitaを24時間接触させた結果、高い殺線虫活性が認められた。酢酸およびn-酪酸の殺線虫活性の程度はほぼ同じで、両者の混合溶液には相加効果が認められた。また、pHが低いほどVFAsの殺線虫活性は高くなったことから、殺線虫活性とVFAsのイオン化との関連性が示唆された。イオン化していない酢酸のLC50は5.6 ± 0.2 (SEM)mMと推定された。野外試験において5.7 mMの酢酸と1.5mMのn-酪酸が検出されたが、土壌pHは殺線虫効果が発揮される値よりも高かった。還元条件下で土壌微生物によって生成されたVFAsが、RSDの殺線虫効果における一要因と考えられる。

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© 2009 日本線虫学会
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