日本畜産学会報
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世代効果の分散の大きさが育種価予測の正確度に与える影響
豚閉鎖群に関するシミュレーション
佐藤 正寛西田 朗古川 力
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1992 年 63 巻 5 号 p. 457-461

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抄録
環境効果の分散の大きさが,育種価予測の正確度に与える影響をコンピュータシミュレーションによって検討した。その際,わが国で行なわれている豚の系統造成の規模に即して,種豚の頭数が毎世代,雄10頭,雌40頭の閉鎖群を想定した。まず,遣伝率が0.1,0.3,0,5である形質を想定し,それぞれの形質について3世代分の無作為交配による記録をコンピュータによって発生させた。このとき,各形質ごとに世代効果の分散の大きさを5通りに変化させた。ついで,最終世代の各個体の育種価を,(1)個体自身の記録,(2) 個体自身とその両親および両祖父母の記録を用いた家系指数(家系指数),(3) 全平均を母数効果としたアニマルモデルによるBLUP (BLUP-μ),(4) 世代の効果を母数効果としたアニマルモデルによるBLUP (BLUP-F)を用いて予測した。これらの予測殖と真の育種価との相関係数を求めて育種価予測の正確度の指標とした。その結果,個体自身の記録および家系指数による育種価予定の正確度は,世代効果の分散の大きさとは無関係に一定であった。一方,世代効果のばらつきが大きくなるにつれて,BLUP法による予測の正確度は低下し,シミュレーションの反復による正確度のばらつきは大きくなる傾向にあった。価体自身の記録による育種価予測の正確度に対する他の予測法の正確度の比は,遺伝率が低いほど大きくなった。家系指数とBLUPによる予測の正確度の差は,遺伝率が高い(h2=0.5)場合には,非常に小さなものであった。しかし,遺伝率が低い場合,特に世代効果の分散が小さいときには,BLUPによる予測の正確度は,家系指数によるそれを上回った。世代効果の分散が大きくなるにしたがい,BLUP-Fによる育種価予測の正確度はBLUP-μのそれに比べて相対的により大きく高まり,その反復誤差は相対的により小さくなった。
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