2006 年 64 巻 3 号 p. 153-159
物性を把握した市販レトルト粥について, 若年者および, 身体および摂食機能状況を把握した高齢者を対象とし, 口腔感覚および飲み込みやすさの違いを官能評価の手法を用いて検討した。
1) 今回使用した市販レトルト粥の場合, 粥飯1粒が硬いと粥全体は硬くなり, また付着エネルギーも大きかった。しかし, 粥全体の凝集性に, 粥飯1粒の硬さの影響は認められなかった。また, 粥飯の割合が多い市販レトルト粥試料は, 重湯のみかけの粘性率も高くなった。市販レトルト粥は, 団塊法により粥全体のテクスチャー特性を把握することで, 粥飯1粒の硬さおよび重湯の性状も推測できることがわかった。
2) 粥飯量が多く, テクスチャー特性の硬さが硬く, 重湯の粘性率が高い粥試料を, 若年者, 高齢者共に口中でかたく感じ, 飲み込みにくいと評価し, また, 付着エネルギーが高く, 重湯のみかけの粘性率が高い粥試料を, 若年者はべたつき感があり, 飲み込みにくいと評価した。
3) 口中で感じるかたさ, および飲み込みやすさの評価では若年者および高齢者でほぼ同様の評価結果が得られた。しかし, べたつき感の評価が困難な高齢者が多く認められた。以上の結果より, 今回パネルになった身体および摂食機能状況にある高齢者が口中で感じるかたさ, および飲み込みやすさの評価については, 若年者の評価で代替してもよいことが示唆された。