2003 年 121 巻 1 号 p. 4-14
コラーゲン特異的分子シャペロンHSP47は,個体の正常発生にとって必須の分子シャペロンであることが,遺伝子破壊の結果明らかになった.HSP47欠損マウスにおいては,コラーゲン分子の3本鎖形成に異常が見られ,コラーゲン繊維や基底膜の形成不全を起すことによって,マウスは胎生致死となる.一方,HSP47の発現は,その基質であるコラーゲンと常に相関する.このことはコラーゲンの異常な蓄積を特徴とする各種繊維化疾患においても観察され,重要なことは,HSP47合成を抑制することによって,予備的ながらコラーゲンの蓄積と繊維化の進行が部分的に抑えられたことである.HSP47の転写調節機構が一部明らかになり,新たに同定された転写因子を介したHSP47の発現制御を通じて,繊維化を抑制できる可能性が示唆された.