2011 年 10 巻 4 号 p. 565-571
リンゴ‘はるか’と‘ふじ’の葉と果梗,果実における糖含量の変化,光合成速度および光合成産物の転流について比較した.また,これらに及ぼす果実への袋かけ処理の影響についても検討した.果実の全糖含量は,7月以降‘ふじ’より‘はるか’で高く,この品種間差に最も大きく影響していたのはフルクトース含量であり,次にスクロース含量であった.葉では8および9月において,果梗ではいずれの時期でも,全糖およびソルビトール含量が‘ふじ’より‘はるか’で高く推移した.収穫果の全糖含量は,袋かけ処理により‘はるか’でのみ低下し,これはフルクトース含量の低下によるものであった.葉の糖含量は袋かけ処理により変化しなかったが,果梗のフルクトース含量は両品種とも無袋果より有袋果で高く推移した.しかしながら,これらの糖蓄積の品種間差や袋かけ処理の影響を光合成速度と光合成産物の転流量から議論したが,明らかにはできなかった.