ウメ‘南高’果実の生育期間中における同化養分の競合特性を調べるために,
13Cを用いて‘南高’の果実肥大第I(展葉期・前期肥大期),II(硬核期)およびIII期(後期肥大期)のそれぞれの時期において,新梢と果実中の
13C吸収量および分配率の変化を調べた.また,着果負担が樹体器官別の
13C吸収量や分配に及ぼす影響,および,樹体生育に及ぼす影響について調査した.肥大第I期では,新梢の乾物1 g当たりの
13C吸収量が果実に比べて多く,分配率も高かった.ただし,果実にも約3割の同化養分が分配されており,果実生育初期から養分競合が始まっていることが確認された.肥大第II期は,果実の乾物1 g当たりの
13C吸収量が葉と同程度まで増加した.特に,核と仁の
13C吸収量が多かった.その結果,果実への
13C分配率は約6割となり,新梢の約4割に比べて高くなった.肥大第III期における果実の乾物1 g当たりの
13C吸収量は,第II期に比べて少なくなったが,
13C分配率は約4割を維持していた.このことから,果実と新梢の間の同化養分競合は,果実の全生育期間を通じて存在しており,特に肥大第II期に最も強いと考えられた.着果量が多い樹体では,少ない樹体に比べて新梢と根の乾物1 g当たりの
13C吸収量が少なくなり,
13C分配率も低かった.また,弱剪定を施した着果量が多い樹体では,葉の黄化や巻きおよび早期落葉が認められた.また,当年枝の伸長停止が早まるため,長果枝や発育枝などの生育旺盛な枝の本数が少なくなり,短果枝や枯死枝が増加した.以上のことから,ウメ‘南高’樹体における新梢と果実の間の同化養分競合は,果実肥大第II期に最も激しいことが明らかになった.また着果量が多いと新梢や根への同化養分転流が抑えられ,樹体生育が抑制されると考えられた.
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