園芸学研究
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10 巻, 4 号
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原著論文
繁殖・育苗
  • 文室 政彦
    2011 年 10 巻 4 号 p. 451-459
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    マンゴー‘アーウィン’と‘愛紅’の自根苗を生産する目的で,取り木発根に及ぼす諸要因を調査するとともに,‘アーウィン’と‘愛紅’を含む17品種を供試して,取り木発根能の品種間差異を検討した.環状はく皮部の噴霧処理に使用するオーキシンの種類として,2品種ともNAAはIBAより発根率が高い傾向がみられたが,発根数および総発根長には有意差がなかった.一方,オーキシン処理を行わないと全く発根しなかった.NAA濃度としては,2品種とも発根率および総発根長が1,000 ppmより2,000 ppmで優れていたことから,発根に好適なNAA濃度は2,000 ppmと考えられた.NAAの追処理を行うと発根率が低下する傾向がみられ,‘アーウィン’では発根数および総発根長が低下した.ABAの添加は‘アーウィン’の発根に,形成層除去および発根培地の水分含有率は,‘愛紅’の発根に影響しなかった.2品種とも枝齢は発根に影響しなかったが,多着葉新梢は少着葉新梢よりも発根率が高い傾向がみられ,発根数および総発根長が高かった.2品種とも取り木適期は7~8月であると考えられた.取り木発根能の品種間差異では,‘スピリットオブ76’が最も高く,次いで,‘愛紅’,‘アーウィン’,‘コム’および‘グレン’であり,‘センセーション’,‘ゴールデンリペンス’および‘ドット’はやや低く,‘リペンス’,‘トミーアトキンス’,‘フロリジェン’および‘バレンシャプライド’は低く,‘アルフォンソ’,‘エドワード’,‘フロリゴン’,‘キョサワイ’および‘ナムドクマイ’は全く発根しなかった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 窪田 聡, 遠藤 路子, 堀本 大雅, 村松 嘉幸, 腰岡 政二
    2011 年 10 巻 4 号 p. 461-466
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    根域温度を調節できる底面給水法,いわゆる根域環境制御システムの開発を目指し,根域環境制御システム用の水供給装置として,鉢底に排水孔の無い多孔質鉢の利用と機能について,パンジーを用いて従来法と比較栽培試験を行った.また,多孔質鉢内部への水分供給速度に及ぼす土壌の種類と水深の影響について検討した.多孔質鉢は,水を入れたプラスチック容器内に設置した.その結果,多孔質鉢栽培では従来の頭上灌水やマット給水に比べて生育が促進され,多孔質鉢は根域環境制御システムの水供給装置として利用できると判断された.また,多孔質鉢内部への水供給速度は土壌と水深によって大きく異なり,水深を調節することにより鉢内の土壌水分率を調節することが可能であった.
  • 東尾 久雄, 一法師 克成, 伊藤 秀和, 東 敬子
    2011 年 10 巻 4 号 p. 467-473
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    キュウリ,ズッキーニ,ダイコンおよびニンジンについて,ダイオキシン類の土壌からの吸収・移行性を検討した.その結果,根や植物体で検出されたダイオキシン類の量は極めて低かった.しかし,いずれの作物においてもダイオキシン類は検出され,とりわけズッキーニで土壌から根に吸収され,地上部に移行するダイオキシン類量の多いことが明らかとなった.また,調整培養土で栽培したズッキーニの蒸散液中にダイオキシン類が認められた.
  • 山中 正仁, 後藤 丹十郎, 小河 甲, 宇田 明, 宮浦 紀史, 山口 国夫
    2011 年 10 巻 4 号 p. 475-483
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    カーネーションの土耕栽培における灌水同時施肥法の給液管理の簡素化と汎用化を目的に,冬春切り1年作型において,‘ノラ’を用いてみかけの窒素吸収濃度による給液管理法を検討した.総切り花収量は,窒素濃度を季節ごとに4分割した区が最も多く,次いで1か月ごとに12分割した区,一定区の順となり,有意な差が認められた.切り花形質は,定植後33~36週において,一定区の切り花重/切り花長の値が,12分割区より有意に小さかった.土壌溶液のECと硝酸態窒素濃度には,処理による差が認められた.収穫期に相当する定植後20週以降の硝酸態窒素濃度は,一定区では時期による変動が最も大きく8~169 ppm,4分割区では54~103 ppm,12分割区では21~108 ppmとなった.このように,4分割区の濃度変動が最も小さく,栽培期間を通して,土壌溶液の硝酸態窒素濃度をおおむねカーネーションの生育に好適とされるレベルに維持できた.
  • 堀内 尚美, 亀有 直子, 車 敬愛, 鈴木 栄, 平沢 正, 荻原 勲
    2011 年 10 巻 4 号 p. 485-490
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    ブルーベリー‘Tifblue’を供試し,土壌が湿潤な状態から葉の光合成速度が著しく低下するまで徐々に乾燥ストレスを与え,その後再び灌水したときの葉の水ポテンシャル,光合成速度,果実肥大の推移を,着果樹と無着果樹とで比較した.土壌含水率の低下に伴い,葉の水ポテンシャルと光合成速度が低下した.葉の水ポテンシャルが約−3.5 MPaで土壌含水率が約8%のとき,果実全てが萎れ,新梢全体が垂れ,葉の光合成はほぼ停止状態であった.着果樹の葉の水ポテンシャルおよび光合成速度の低下は,無着果樹よりも早くおこった.再灌水を行ったところ,乾燥区の葉の水ポテンシャルは再灌水後1日目で高くなったが,対照区と同じ程度までは回復しなかった.再灌水後の乾燥区の光合成速度は対照区の1/2程度であり,着果樹では無着果樹より回復が遅かった.したがって,光合成機能の回復臨界点からの灌水の目安は,葉の水ポテンシャルが−3~−3.5 MPaになる前であること,着果は乾燥ストレスを助長することが分かった.
  • 犬伏 加恵, 堀田 真紀子, 片岡 哲朗, 服部 裕美, 奥村 義秀, 二村 幹雄, 大石 一史
    2011 年 10 巻 4 号 p. 491-497
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    カーネーション萎縮叢生症からの回復効果の高い断根処理法を検討した.まず,切除する根の量と切除後の土壌環境を変える実験を行った.回復のためには,根鉢を8割切除し,切除前と異なる涼温適湿条件の土壌環境下で栽培し,新しい根を多く伸長させることが重要であることがわかった.さらに,断根処理の時期(8月下旬と9月下旬)およびその時の発症程度が,回復状況および収量に及ぼす影響を調査した.その結果,断根処理の時期は収量には大きな影響は及ぼさなかったが,9月下旬より8月下旬に断根処理をした方が早く回復する株が見られた.また,発症程度が軽度の株に断根処理をすると,重度の株よりも早く回復し,3月下旬以降の累積収量が8月下旬に断根処理した株において正常株と同程度となった.以上より,暖地のカーネーション産地において断根処理を行う場合,残暑が厳しい時期であっても,症状が軽度のうちに根が全体的に短くなるよう(根鉢の8割など)切断すると,回復効果が高いことが明らかとなった.
栽培管理・作型
  • 平間 信夫, 水澤 秀雅, 小豆畑 二美夫
    2011 年 10 巻 4 号 p. 499-505
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    キュウリの促成栽培において,ハウスの換気程度の違いが生育および収量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.‘ゆうゆう一輝(黒)’に接ぎ木した促成栽培用品種である‘夏のかほり’を供試し,8~13時の気温を25℃(L区)と30℃(H区)を目安に換気して管理する2処理区を設けて試験を行った.その結果,L区ではH区に比べて果実の肥大が緩慢となり,葉の成長が促進された.一方,側枝の発生総数,果実の収穫本数や上物本数には,換気の違いによる大きな影響はなかった.整枝法については,数本の第二次側枝を摘心せずに伸長させるつる下ろし区や3本放任区が他の整枝区より収穫本数や上物本数が多く,しかも整枝作業が単純であることから,促成栽培には有効な整枝法であると考えられた.
  • 小林 幹夫, 堀内 尚美, 大村 正敏, 車 敬愛, 荻原 勲
    2011 年 10 巻 4 号 p. 507-512
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    ハイブッシュブルーベリーの‘Spartan’,‘Bluecrop’,‘Darrow’および‘Dixi’の4品種を用いて,房取り収穫と個別収穫した果実について,保存前後の品質の特性を調査した.房取り収穫した果実は,1果重がやや小さく,1果重,果実硬度,糖度,酸度のばらつきは個別収穫に比べて大きい傾向を示したが,それらの保存後の減少率は小さく,また萎縮が少ないため,外観的品質は良かった.供試品種の中でも‘Bluecrop’と‘Darrow’は,保存前の1果重のばらつきが小さく,保存後の1果重,果実硬度,酸度の減少率は小さく,着生強度は大きかった.両品種は保存後の品質も高く維持できることから,房取り収穫法が可能な品種であることが分かった.
  • 門脇 伸幸, 多比良 和生, 杉浦 俊彦
    2011 年 10 巻 4 号 p. 513-519
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    ニホングリの収穫始期予測法を開発するために,‘丹沢’,‘筑波’および‘石鎚’における過去44年間(1965~2009年)の生態データを解析した.雌花開花盛期と収穫始期には有意な正の相関が認められ,雌花開花盛期が早くなると収穫始期も早くなった.得られた回帰式より収穫始期を推定したときの予測誤差(RMSE)は,4.3~4.9日であった.また,雌花開花盛期直後約30日間の平均気温と成熟日数の間には,有意な負の相関関係が認められ,その期間の気温が高いと成熟日数が短くなった.得られた回帰式より収穫始期を推定したときの予測誤差は,3.7~5.0日であった.さらに,果実成熟後期に,成熟日数と有意な正の相関関係が認められる時期が存在した.この関係を加味した予測式より収穫始期を推定したときの予測誤差は,3.0~3.3日であった.以上のように,3段階での予測が可能で,生育段階に応じて精度が向上してゆく収穫始期予測式が得られ,その誤差の大きさから判断して,十分に実用的な予測法が開発された.
  • 山崎 敬亮, 熊倉 裕史, 浜本 浩, 齋藤 弥生子
    2011 年 10 巻 4 号 p. 521-529
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    イチゴ促成栽培における将来的な「育苗の分業化」を想定して,苗の供給者,実需者双方が活用または参照できるようなセル成型苗の利用技術について,基盤的研究を行った.‘章姫’,‘とちおとめ’および‘紅ほっぺ’の3品種について,セルの容量と形状が生育や移植時のハンドリングの良さに及ぼす影響を検討したところ,72穴で1セル当たり37 mLの丸形セルトレイにおいて,挿し苗後20日で根鉢が良好に形成され,1セル容量45 mL角形や70 mL丸長形セルトレイと比較しても,生育に遜色がなかった.このセルトレイを用いた場合の適切な育苗日数について,‘紅ほっぺ’を用いて調査した.20日育苗のセル成型苗は定植後の根の活着が良く,地上部の生育も良かった.頂花房の収量も,有意性はないものの30日や40日育苗に比べて多い傾向が見られた.20日間育苗したセル成型苗を,基肥施用前の土壌中の硝酸態窒素含量が8.8 mg・100 g−1乾土以上の圃場に定植すると‘章姫’,‘とちおとめ’および‘紅ほっぺ’のいずれの品種でも各花房出蕾日が遅れる傾向があり,10.3 mg・100 g1乾土では,3月までの総収量が減少した.これは頂花房の分化の遅れとともに,頂花房と一次腋花房の分化・発達期が重なることで養分競合が起こり,全体的な生育遅延を招いたことが原因と考えられた.明らかな収量低下を招かないための基肥施用前の土壌中の硝酸態窒素含量の許容範囲は,‘章姫’では2.5~6.3 mg・100 g1,‘とちおとめ’および‘紅ほっぺ’では4.4~8.8 mg・100 g1乾土と判断された.
  • 戸谷 智明, 川瀬 信三
    2011 年 10 巻 4 号 p. 531-536
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    千葉県内の3地点(千葉市,市川市および一宮町)におけるニホンナシ‘幸水’の休眠期と開花期について,気温上昇による影響を明らかにした.調査した3地点の気温は,1980~2009年において1年当たり0.041~0.068℃上昇していた.それに伴い千葉市と市川市の満開日は,それぞれ1年当たり0.32および0.36日前進していた.一宮町の満開日は,1991年まで有意な前進が認められたが,1992年以降は前進が止まっていた.市川市と一宮町の自発休眠覚醒日は,その覚醒に有効な低温遭遇時間が減少したため,1年当たり0.42~0.52日遅延していた.調査した3地点の他発休眠期は,2~4月の気温上昇によって1年当たり0.49~0.78日短縮していた.このように,気温上昇によってそれぞれの休眠期が影響を受けた結果,県内3地点の満開日に変動が生じていることが明らかになった.開花期の変動を予測するため,杉浦・本條(1997)の生育予測モデルの実用性を検討したところ,温暖な一宮町においては誤差が大きく適用できなかった.実用性が確認できた千葉市や市川市でも,気温が上昇した場合,精度が低下する可能性が示された.また,一宮町における自発休眠覚醒は,0.59℃以上の気温上昇が生じた場合,不完全になることが示唆された.
  • 稲葉 善太郎, 馬場 富二夫, 石井 ちか子, 石井 香奈子, 武藤 浩志, 末松 信彦, 堀内 正美
    2011 年 10 巻 4 号 p. 537-544
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    日本の暖地においてキンギョソウ‘メリーランドピンク’,‘ライトピンクバタフライII’および‘ポトマックアーリーホワイト’を供試し,7月16日,7月31日および8月14日に播種して第2または3節で摘心し,冬期夜温11℃設定で栽培した.‘メリーランドピンク’では,7月31日および8月14日播種の第3節摘心により,採花本数の増加と開花初期の切り花長が長くなることが認められた.‘ライトピンクバタフライII’では,いずれの播種時期においても第2節摘心で開花初期の切り花長が長かった.‘ポトマックアーリーホワイト’では,7月16日播種の第2または3節摘心および7月31日の第3節摘心により冬季の採花本数が増加した.
  • 森山 友幸, 伏原 肇, 奥 幸一郎
    2011 年 10 巻 4 号 p. 545-550
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    ナスの促成栽培における暖房コストの削減を目的として,主枝の株元部分の茎の加温が収量および品質に及ぼす影響を検討した.電熱線を用いて主枝の株元部分の茎を加温することにより,側枝の成長および果実の肥大が促進され,収穫果に占める不良果(曲がり果,首細果および細果)の発生が減少して1~6月の商品果率が向上した.これらの要因により,株元加温区は無処理区と比較して1~6月の収穫果数が多くなり,商品果収量が増加した.また,最低気温を10℃で管理したハウスで株元加温した区の商品果収量は,最低気温を12℃で管理したハウスの無処理区と同等であった.これらの結果から,ナスの促成栽培では株元加温により暖房コストを大幅に削減できることが示唆された.
  • 土田 靖久, 薬師寺 博, 根来 圭一, 菱池 政志
    2011 年 10 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    ウメ‘南高’果実の生育期間中における同化養分の競合特性を調べるために,13Cを用いて‘南高’の果実肥大第I(展葉期・前期肥大期),II(硬核期)およびIII期(後期肥大期)のそれぞれの時期において,新梢と果実中の13C吸収量および分配率の変化を調べた.また,着果負担が樹体器官別の13C吸収量や分配に及ぼす影響,および,樹体生育に及ぼす影響について調査した.肥大第I期では,新梢の乾物1 g当たりの13C吸収量が果実に比べて多く,分配率も高かった.ただし,果実にも約3割の同化養分が分配されており,果実生育初期から養分競合が始まっていることが確認された.肥大第II期は,果実の乾物1 g当たりの13C吸収量が葉と同程度まで増加した.特に,核と仁の13C吸収量が多かった.その結果,果実への13C分配率は約6割となり,新梢の約4割に比べて高くなった.肥大第III期における果実の乾物1 g当たりの13C吸収量は,第II期に比べて少なくなったが,13C分配率は約4割を維持していた.このことから,果実と新梢の間の同化養分競合は,果実の全生育期間を通じて存在しており,特に肥大第II期に最も強いと考えられた.着果量が多い樹体では,少ない樹体に比べて新梢と根の乾物1 g当たりの13C吸収量が少なくなり,13C分配率も低かった.また,弱剪定を施した着果量が多い樹体では,葉の黄化や巻きおよび早期落葉が認められた.また,当年枝の伸長停止が早まるため,長果枝や発育枝などの生育旺盛な枝の本数が少なくなり,短果枝や枯死枝が増加した.以上のことから,ウメ‘南高’樹体における新梢と果実の間の同化養分競合は,果実肥大第II期に最も激しいことが明らかになった.また着果量が多いと新梢や根への同化養分転流が抑えられ,樹体生育が抑制されると考えられた.
  • 大野 浩, 田村 博明
    2011 年 10 巻 4 号 p. 559-563
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    わい性台木JM7に接いだリンゴ‘ふじ’において,簡便な樹勢判定方法の検討を行った.7月上旬における頂端新梢葉数は,これまで樹勢を表す指標として主に使用されてきた頂端新梢長と正の相関が認められた.頂端新梢葉数は器具を使用せずに測定することができることから,簡便な指標として利用可能と考えられた.また,頂端新梢葉数は1果重と正の相関が認められ,頂端新梢葉数の測定により収穫時の果実重を推定することが可能であった.
発育制御
  • 渡邉 学, 小山田 知広, 壽松木 章, 村上 政伸, 佐川 了, 小森 貞男, 荒川 修
    2011 年 10 巻 4 号 p. 565-571
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    リンゴ‘はるか’と‘ふじ’の葉と果梗,果実における糖含量の変化,光合成速度および光合成産物の転流について比較した.また,これらに及ぼす果実への袋かけ処理の影響についても検討した.果実の全糖含量は,7月以降‘ふじ’より‘はるか’で高く,この品種間差に最も大きく影響していたのはフルクトース含量であり,次にスクロース含量であった.葉では8および9月において,果梗ではいずれの時期でも,全糖およびソルビトール含量が‘ふじ’より‘はるか’で高く推移した.収穫果の全糖含量は,袋かけ処理により‘はるか’でのみ低下し,これはフルクトース含量の低下によるものであった.葉の糖含量は袋かけ処理により変化しなかったが,果梗のフルクトース含量は両品種とも無袋果より有袋果で高く推移した.しかしながら,これらの糖蓄積の品種間差や袋かけ処理の影響を光合成速度と光合成産物の転流量から議論したが,明らかにはできなかった.
  • 真野 隆司, 杉浦 俊彦, 森口 卓哉, 黒田 治之
    2011 年 10 巻 4 号 p. 573-579
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    イチジク‘桝井ドーフィン’に対する環状剥皮が凍害の発生に及ぼす影響を検討した.露地圃場の挿し木個体は萌芽期の凍害を受けたが,前年の秋季に環状剥皮処理を行った挿し穂を用いると,萌芽が遅くなり凍害が軽減された.また,ポットの挿し木個体について,萌芽期に低温処理を行った結果,−3℃以下で枯死する芽が発生した.しかし,前年の秋季に環状剥皮を施し,かつ,より下位節から採取した挿し穂の方が糖やデンプン含量が高く,遅く萌芽して芽の枯死が少なかった.さらに,露地圃場に定植した幼木についても,秋季に環状剥皮を行った枝の糖とデンプン含量が高く,厳寒期の凍害が少なかった.以上より,イチジク‘桝井ドーフィン’に対する環状剥皮処理は,休眠枝の貯蔵養分を高め,その生育ステージが遅延することによって,萌芽期や厳寒期の凍害を軽減する効果があると考えられた.
作物保護
  • 小川 晃一郎, 森 太郎, 松崎 弘美, 松添 直隆
    2011 年 10 巻 4 号 p. 581-587
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/19
    ジャーナル フリー
    植物病原細菌Ralstonia solanacearumは植物,土壌および培地中で非病原性株(PC株)に変異する.本研究では,PC株(E-PCstr)の接種によるナス青枯病の発病抑制効果を調査した.さらに,罹病性ナス12品種を供試し,PC株の接種による青枯病発病抑制効果の品種間差異を調査した.罹病性ナスに20 mLのE-PCstr(106 cfu(colony forming units)・mL1の生菌,108 cfu・mL1の生菌または108 cfu・mL1の死菌)を接種し,7日後に,107 cfu・mL1の病原性株8238rif(野生株8238のリファンピシン自然耐性株)20 mLを接種した.E-PCstrの死菌および生菌106 cfu・mL1を接種した個体では,発病抑制効果はなかった.一方,高濃度のE-PCstrの生菌108 cfu・mL1を接種した個体では,発病抑制効果が認められた.発病が抑制された個体では,E-PCstrの確実な定着が認められ,8238rifの垂直方向への移行抑制があった.E-PCstrの接種による発病抑制効果は,供試品種の中で比較的に青枯病抵抗性が弱い品種では防除効果が低く,比較的に強い品種では防除効果が高くなる傾向にあり,PC株の発病抑制効果に品種間差異が認められた.
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