2010 年 9 巻 2 号 p. 221-227
イチゴの輸送中に想定される衝撃加速度あるいは衝撃発生回数に対応した損傷防止対策のための基礎的知見を得るために,イチゴの輸送工程における衝撃加速度および衝撃回数を加速度記録計により調査し,それらがイチゴの商品性に及ぼす影響を調査した.さらに,緩衝材の使用によるそれらの衝撃および果実の商品性低下の軽減効果について検討した.その結果,輸送時における衝撃の大半が最下段の箱に集中することが明らかとなり,衝撃による損傷防止のための緩衝包装設計を行う場合,1段目(最下段)の包装容器に係る衝撃加速度および衝撃回数について考慮すべきであることが示唆された.衝撃加速度と果実の商品性が喪失するまでの衝撃繰り返し回数との関係は累乗近似曲線(R2 = 0.98)により表すことができ,この曲線により輸送工程における衝撃加速度および衝撃回数が果実の商品性に及ぼす影響を予測することができた.さらに,この曲線を用いることにより緩衝材の厚さと衝撃によるイチゴの商品性低下の軽減程度との関係を明らかにすることができた.以上の結果より,輸送経路あるいは手段ごとの損傷発生を予測することができ,的確かつ効率的な損傷防止対策が可能になると考えられた.