抄録
イキシア‘ヴィーナス’を用い,球茎への低温処理による開花促進の可能性を検討した.低温処理は,湿らせたピートモスに植えつける湿潤処理で最も開花所要日数が短くなり,処理温度としては8および12℃が最適であった.また8℃で低温処理した場合,6週間以上の処理期間で高い開花率が得られ,8週間まででは期間が長いほど開花所要日数が短縮された.低温処理前に球茎を20℃で乾燥貯蔵すると,貯蔵期間が長いほど発芽が早くなり,6週間以上貯蔵することで低温処理による開花促進効果がより確実に得られた.一方,30℃では貯蔵期間が長くなると,20℃に比べ発芽が遅れ,また開花率も低下した.得られた結果から,開花の促進には掘り上げ後の球茎を20℃で6週間以上乾燥貯蔵し,8℃ 8週間湿潤条件の低温処理を行えば最も有効であり,低温処理を8月上旬までに開始することにより年内に切り花を出荷できる可能性が示された.