Journal of Applied Glycoscience
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段ボール製造用スタインホール型澱粉接着剤の初期接着性と高温糊化液物性に及ぼす苛性ソーダ濃度の影響について
小役丸 孝俊
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2008 年 55 巻 4 号 p. 245-254

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抄録

スタインホール型(SH)段ボール製造用澱粉接着剤の高速接着時の必要物性を明確にするために,苛性ソーダ濃度を変えたトウモロコシ,ハイアミローストウモロコシ(ハイロン-5),ワキシートウモロコシ,小麦の高濃度澱粉糊化液について,85℃でせん断ひずみ初期のせん断弾性率,最大せん断応力値,せん断応力パターンと粘度を測定した.苛性ソーダ濃度変化による4種澱粉懸濁液糊化液のレオロジー物性の変化は,弾性率と最大応力に達するまでのひずみ量との組合せで整理すると,三つのタイプに類別された.ワキシーでは苛性ソーダ濃度が変化しても最大応力ひずみ量は9.6-10.8程度と大きく,弾性率は0.4kPa以下に低くなり,ハイロン-5では最大応力ひずみ量が0.7以下に少なく,弾性率は4kPa以上に高いレベルとなった.一方,トウモロコシと小麦では,苛性ソーダ濃度が0.9%まで増加するに従って,弾性率は6.8kPaから0.3kPaまで顕著に減少し,最大応力ひずみ量は0.3から3.8まで大きくなった.同様に,トウモロコシと小麦のSH接着剤糊化液でも,苛性ソーダ濃度の増加に従って弾性率が低くなり最大応力ひずみ量が増加した.苛性ソーダ濃度の増加に従ってSH接着剤糊化液は弾性体から流動体としての性質が強まったが,これらのSH接着剤を用いて片段試料と表ライナー原紙を170℃のホットプレートで加熱貼合して,ただちに剥離したときの初期接着性は,苛性ソーダ濃度に最適値があった.電顕観察によると初期接着時に強制剥離した接着剤凝集破壊部では,苛性ソーダ濃度の増加と共に次第に澱粉粒が膨潤して形状が不鮮明となったが,初期接着性の向上は,苛性ソーダ濃度が低く粒形状が鮮明な場合にも,苛性ソーダ濃度が高くて粒形状の痕跡もなく接着剤部が平坦に一体化した場合にもみられなかった.初期接着性最適苛性ソーダ濃度での糊化状況は粒形状が不鮮明な膨潤粒痕跡となる程度であり,初期接着性には澱粉粒間にキャリヤー部澱粉が介在するだけではなく,澱粉粒間での癒着融合が起こると共に,接着面積を増加する適度な流動性とある程度の弾性率の高さとのバランスが重要と考えられた.

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© 2008 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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