1998 年 37 巻 3 号 p. 205-210
日本では,広域風成塵は主として冬季の北西モンスーンによって飛来する.このため,広域風成塵の堆積速度の変動から,北西モンスーンの強度の変動が復元できる可能性が高い.広域風成塵の堆積の証拠として,粒径組成と鉱物組成が用いられるが,両者だけでは確定的ではない.そのため,近年では石英の酸素同位体比組成,天然熱蛍光(TL),酸素空格子信号強度を併用して,第四系中への広域風成塵の混入が明らかにされている.このような証拠をもとに求められた日本周辺における広域風成塵の堆積速度は,おおむね100~10-1mg cm-2y-1のオーダーであり,寒冷な時期に堆積速度が増加する傾向が認められた.このことは,寒冷な時期に北西モンスーンの強度が増大したことを示唆する.