1998 年 37 巻 3 号 p. 211-219
日本海および南シナ海の海底堆積物の高解像度記録と,グリーンランドGIPS2氷床コアの記録を比較したところ,最終氷期において低-中緯度の東アジアモンスーンと高緯度のグリーンランドとの間に気候上のテレコネクションがあったことが示唆された。
Dansgaard-Oeschgerサイクルにおいて急激に温暖化した時代は,モンスーンが強化されて南シナ海や東シナ海への降水量が増加した時代と一致する.そうした時代には,南シナ海では海洋表層の塩分が低下し,日本海では淡水流入によって海水の鉛直混合が弱まり,暗色の細互層が堆積している.このようなテレコネクションが起こった原因は,夏季の南西モンスーンあるいは南東モンスーンと偏西風との間の相互作用によって生じたと考えられる.すなわち,グリーンランドのような高緯度が暖められると,偏西風のまっすぐ進もうとする力が弱まり,東アジアではモンスーン循環が南北方向に蛇行する.その結果,夏季に陸上の中-高緯度が暖められて,陸上の低気圧帯と海との間の気圧傾度が増加し,南西モンスーンや南東モンスーンが強められるからである.