1981 年 34 巻 6 号 p. 599-616
虚血性大腸炎(IC)19例(手術10例,生検9例)と閉塞性大腸炎(OC)5例について,病理形態学的立場から比較検討した.
両疾患の肉眼的・組織学的所見は全く同一で,急性型ではびまん性の粘膜出血,偽膜を伴うUl-I,IIの潰瘍が,慢性型では結腸紐に沿ったUl-IIの1~3条の縦走潰瘍,粘膜下層の強い線維筋症および全層性の担鉄細胞の出現が特徴的であり,ICの4例とOCの2例では漿膜の小・中型筋型動脈内膜に軽度から高度の線維筋性肥厚を認めた.また,両疾患の経時的変化ではともに初めびまん性出血性病変が,まもなく縦走傾向を示す潰瘍性病変となり,慢性期には明らかな縦走潰瘍となった.
以上の成績から両疾患は本質的には同一種類の疾患であろうと結論し,両疾患の成因として動脈硬化などの血管側因子と腸管内圧上昇や蠕動運動(平滑筋のspasm)などの腸管側因子の両方が重要であることを強調し,合わせて特徴ある潰瘍の病理形態発生にも言及した.