海水系環境中におけるステンレス鋼のすきま腐食発生時間の推定値を定電位法により評価した.定電位試験直前に研磨をおこなったすきま付与試験片とすきまなし試験片の種々の定電位値における電流密度-時間曲線を測定し,これらの曲線の差分からすきま腐食発生時間推定値tINCUおよび試験開始からすきま腐食発生までに要した単位面積当たりの電気量QINCUの電位依存性を明らかにした.その結果,tINCUは貴な電位ほど短縮するのに対して,QINCUは電位にほとんど依存せず一定値を示すことを明らかにした.これは,すきま腐食発生前のすきま部に流れる電流密度iINCU が貴な電位になるほど増大するためである.また,このことは同時にすきま腐食が発生するために必要な金属イオン溶出量およびすきま腐食発生の根本原因である脱不動態化pHが電位にほとんど依存しないことを示唆している.