日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
高齢者診療の臨床背景
—国立長寿医療センター耳鼻咽喉科外来での統計から—
杉浦 彩子内田 育恵中島 務
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キーワード: 高齢者, 主訴, めまい, 難聴
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2009 年 112 巻 7 号 p. 534-539

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抄録

日本は2007年より65歳以上の高齢者の人口が20%を超える超高齢社会となり, 耳鼻咽喉科外来においても高齢者の占める割合が急増している. 今回われわれは一般耳鼻咽喉科外来を受診する高齢者について, 特に65歳から74歳までの前期高年期と75歳以上の後期高年期ではどのような臨床背景の違いがあるのかについて検討した. 対象は2006年9月より2007年8月までの1年間に国立長寿医療センター耳鼻咽喉科を初診した1,329名 (男性627名, 女性702名) である. 方法は対象を壮年期以下 (44歳以下), 中年期 (45-64歳), 前期高年期 (65-74歳), 後期高年期 (75歳以上) の4群にわけて, それぞれについて主訴, 既往歴, 服薬歴, 受診動機, 発症から受診までの日数について比較検討した. その結果, 主訴として最も多かったのは壮年期以下では咽喉頭痛, 中年期・前期高年期ではめまい, 後期高年期では難聴であった. 高齢になるほど, 既往歴, 服薬歴が増加し, 罹病期間は長く, 自分の意思で受診する割合が減少していた. めまいを主訴とした患者では高齢になるほど中枢性めまいの割合が増加し, 後期高年期では26%を占めていた. 難聴を主訴とした患者は後期高年期で倍増し, かつ, 中等度以上の難聴が7割を占めていた. 高齢者特有の臨床背景を理解した上で診療にあたることが必須であり, 特に主訴として多いめまいと難聴に関しては高齢者のQOLとも直結しており, 啓発, リハビリの充実が急務と考えた.

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© 2009 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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